ジュエリアスの共同経営者、七崎さんと野崎さん

「今度、息子がオトコと結婚するんだよ」LGBTウェディング経営者と、その家族の“リアル”

取材・文、写真:大下直哉

平成最後の夏、まだまだ熱冷めやらぬLGBTブーム。しかし、その主体が何者か見えないまま語られがちなトピックも多いなか、本記事では、七崎良輔さんと野崎映里さんが共同代表として運営するJuerias LGBT Wedding(以下、ジュエリアス)にフォーカスします。彼らが行っているLGBT当事者に向けた事業はもちろん、そのなかで得られた気づきの数々から、「ふつうのアラサー」であるふたりの素顔をお届けします。

気軽な出会いから真剣な出会いまでプロデュース

ーーまず、貴社の事業についてご説明ください。

七崎良輔(以下、七崎):僕たちジュエリアスは大きく分けて3つ、「結婚式のプランニング」「出会いイベントの企画」「公正証書作成のお手伝い」をさせていただいています。

「結婚式のプランニング」では、式を挙げたいと考えるお客様から、どのような式にしたいか希望をヒアリングします。そこから、LGBTフレンドリーな式場を仲介し、式当日までさまざまなサポートを行います。

七崎さんの写真
合同会社Juerias LGBT Wedding共同代表の七崎良輔さん。平成最後の夏、久しぶりに海に行ったときの一言、「20代にはもう勝てないわ」

野崎映里(以下、野崎):「出会いイベントの企画」では、月1回、都内にあるオシャレな一軒家をまるまる貸し切ってゲイパーティを開催しています。人数制限を設けつつ、ゲームなど参加者の交流を図れるようにしています。

ありがたいことに、今年6月に開催した50回記念のゲイパーティには、新規のお客様だけでなくリピーターの方も多数参加いただき、満員御礼となりました。また、不定期ですがレズビアンパーティや、より人数を絞って行う真剣出会いイベント「Destiny」も不定期で開催しています。

野崎さんの写真
同会社Juerias LGBT Wedding共同代表の野崎映里さん。平成最後の夏は「恋の負け越し」が決定したらしい

七崎:「公正証書の作成のお手伝い」は、多くの当事者にとってもなじみがないトピックかもしれません。公正証書は法律の専門家である公証人が作成する公文書のことで、例えば同居にあたってのルールや、万一別れるときの財産の分け方などの“約束事”を記すことができるのです。

それにあたり、公証役場とのパイプ役となってくださる行政書士の先生をご紹介し、僕たちも必要に応じてアドバイスをさせていただいています。

ーー多種多様なサポートをされるにあたって、幅広い知識や経験が求められそうですね。

 七崎:共同代表を務める僕と映里も、ジュエリアスの活動を通じて勉強をしているような感じです。日本におけるLGBTの歴史だったり、それにまつわる民法だったり。

野崎:私たちは高校卒業後、東京都江戸川区にある映画製作の専門学校で出会ったんです。私は福島県、七崎は北海道から上京して、こちらに友人もさほど多くなかったのもあってすぐに打ち解けました。

初めて会ったときから自分の感情を包み隠さない人で、2011年に七崎と一緒にジュエリアスを社会人団体として立ち上げて以来、私はダブルワークで結婚式場やイベント司会などのお仕事をしながら、ジュエリアスの活動をしています。

七崎:映里は人前に出るのに慣れてるから、ゲイのなかに入っても物怖じしない。ゲイパーティに来てくださるリピーターさんから「いい加減、彼氏できないの〜?」なんて、よくいじられてるよね(笑)。

野崎:もう、うるさいなぁ(笑)。

ーーそういえば、野崎さんはストレート(異性愛者)女性ですがLGBTに関する活動をしているんですよね。

野崎:ジュエリアスの仕事で会った人には必ず聞かれます。「どうしてストレートなのにこういう活動をしているの?」って。

でも、私にとっては縁あって出会った七崎が、たまたまゲイだった。彼と話しているうちに、いわゆるセクシュアル・マイノリティの人にとってフェアじゃない現実ーー例えば男女の婚姻のような、本来であれば得られる権利が、残念なことにいまはまだ得られていない現状を知りました。

そんな世の中を変えるためにがんばっている、大切な友人の力になりたい。そう思って初めたことなので、この活動をするうえでの特別な理由というのは、ある意味何もないんです。

今度、息子がオトコと結婚するんだよ」

七崎:さっき映里が話した「婚姻」というのは僕のライフワークで、3年前に公正証書を結んだ夫と一緒に、ジュエリアスとは別に「LGBTコミュニティ江戸川」という団体を運営して、日弁連(日本弁護士連合会)や行政への働きかけをしています。今年の夏にも、オランダ王国大使館や江戸川区長の多田正見さんを招いた一般参加OKのイベントを開催したんですよ。

7月28日のイベントでの七崎さん
2018年7月に行われた「オランダ×LGBT×えどがわ」でプレス撮影に応じる七崎さん夫夫(写真提供:七崎良輔さん)

七崎:そういえば、2017年12月に『婚姻契約公正証書』の作成が同性間でも可能になる以前は、同性のパートナーシップに「婚姻」という言葉が使われなかった理由をご存知ですか?

婚姻っていうのは法律のなかで「公序良俗に反しない」ものであると定められていて、同性の場合はその限りでないという解釈があったためらしいんです。状況は少しずつ改善されていますが、こんな風に勉強すると軽く失望しちゃうこともありますね。

野崎:そんな世の中を変えるため、ただ署名を集めたりセミナーをするだけではなく、当事者の友人や家族を含めた「空気づくり」をしていくのが重要だと考えています。

七崎:本当それ! 11年前に母親にカミングアウト(自分の性的指向を打ち明けること)したとき、「あなたの人生だから尊重するけど、もうそういう話を私にしないで」って言われたから、たぶん結婚式にも出てもらえないだろうなぁと思って。3つ下の妹の説得もあって、なんとか一昨年の秋、両親そろって式に出てもらえたんですけど。

ーーちなみにお父様はどういう反応だったんですか?

七崎:うちの両親は昔、実業団所属のアスリートで、その縁で出会って結婚した体育会系夫婦だったんです。だから、自分の子どもがゲイだと知ったら、母でさえああいう反応だったから、父はどうなるだろうと、本当にドキドキしました。

でも、母づてに僕のカミングアウトの話を聞いた父は「昔からヘンなやつだと思ってたけど、やっぱり変わってるな!」と、意外にひょうひょうとしていたそうです(笑)。結婚式の時も、母は恥ずかしかったのか「今度、甥っ子の結婚式で東京に行くの」と周囲の人に話していたらしいんですけど、父は「今度、息子がオトコと結婚するんだよ!」とかなんとか言ってたみたい(笑)。家族を巻き込むってタイヘン〜。

2016年10月に行われたパートナーシップ仏前奉告式の様子
2016年10月、築地本願寺(東京都中央区)で行われたパートナーシップ仏前奉告式では、仏前結婚式に則り七崎さん夫夫の門出が祝われた(写真提供:七崎良輔さん)

カミングアウトのされ方に正解はない

ーー七崎さんのお話を聞くと、カミングアウトには本当の意味で、「相手と関係する力」が問われるのかもしれませんね。

野崎:個人のセクシュアリティを打ち明ける際もそうですが、パートナーシップを結ぶのは、男女の結婚と同じようにお互いの家族や友人にも関わることですから、よりそうした意味合いが強くなるかもしれません。

自分の家族や友人からカミングアウトされたら、きっと大抵の人は戸惑ってしまうはず。でも、その動揺は必ず相手に伝わるものだから、無理に冷静さを取りつくろう必要はないと思います。それより、カミングアウトを受けて自然に心に浮かんだ気になることや不安なことを「相手を思いやる気持ち」をもって返せたら、コミュニケーションは成立するのではないでしょうか。目の前にいるその人の性的指向がどうであれ、自分の家族や友人には変わりないですから。

ちょっと宣伝していいですか?(笑)。私が企画する料理教室「ジュエリアスキッチン」では、セクシュアリティを問わず参加していただき、みんなで食事を楽しんでいます。

セクシュアリティ不問の料理教室「ジュエリアスキッチン」の様子
セクシュアリティ不問の料理教室「ジュエリアスキッチン」の様子(本イベントを取材した『PUER』はこちらからチェックできます)

野崎:料理のような“日常生活の当たり前”の行動を一緒にすれば、相手が「自分と何ひとつ変わらない人間」だとわかる。そうすれば、いま世の中で起こっているLGBTに関する問題やニュースを、これまでと少し違った角度から見るヒントにもなりますよ。

七崎:今年の夏、不用意な発言で大炎上した議員の件とかね。7月27日に永田町で行われた抗議デモでは、僕もメガホンを取って、「今すぐ辞職!!!」って叫んじゃいました。あ〜、思い出すと汗かいてきた! ジュースもう1杯飲んじゃおっかな(笑)。

ーーたしかにあの議員の一件で、良くも悪くもLGBTに注目が集まりましたよね。

七崎:おそらく当事者のなかには、あの件で活動家が抗議をすることに対して「波風を立てないでほしい」と、考える人もいると思うんです。特に地方だと、自分のセクシュアリティを好奇の目で見られるのではないかといった、外的プレッシャーも大きいでしょうし。

だから僕も、自分の正義を当事者すべてに理解してもらいたいなんておこがましいことはまったく考えていません。でも、気づいた人が声をあげなければ、世の中は変わりっこないんです。

野崎:私も七崎も、とても議論好きなんです。だから、現実でもネットでも理論立った反対意見があれば、ぜひ耳を傾けたいと思っています。そこからしか生まれない考え方やつながりも、きっとあるはずだから。

七崎:実際はただのヘイトスピーチだったりする場合が多い。そういえば昔、僕のブログのコメント欄で一方的に批判ばかりしてくる読者がいて。20代半ばのころはそういうコメントを見るたび、ついイライラして電柱を蹴ったりしてたんだけど(笑)。

野崎:ちょっと(笑)。

七崎:いまはちゃんと冷静になれますよ! 「むやみに人の足を引っ張ったらいけませんよ、幼稚園で習ったでしょ」って、スマホの画面に向かってささやいています(笑)。

 

■インタビュー後編はコチラ